-
新型コロナウイルスの感染状況について、厚生労働省は9日、全国約5000か所の定点医療機関から7月29日~今月4日の1週間に報告された感染者数が、1医療機関あたり13・29人だったと発表した。前週(14・58人)の0・91倍で、13週ぶりに減少した。
都道府県別では、佐賀が27・82人で最も多く、次いで長崎の21・34人、愛知の20・10人だった。石川の16・42人など16道県では増加した。
厚労省感染症対策課では、定期的な部屋の換気や、人が集まる場所でのマスク着用、手洗いなどの基本的な対策の徹底を呼びかけている。
-
群馬県沼田市で多くの認知症患者を診察してきた医師の内田好司さん(87)が、自身も認知症となり、県から認知症本人大使を委嘱された。物忘れの症状を前向きに捉え、「認知症の医師」ならではのメッセージを発信している。(前橋支局 阿部文彦)
内田さんは1988年、出身地の沼田市に病院と介護老人保健施設を設立。92年には群馬県で初めて「認知症専門棟」の許可を得て、院長として活躍した。認知症専門医の長女・田中志子さん(58)に病院経営を譲った後も診療を続けていたが、2022年、中等度のアルツハイマー型認知症と診断された。現在は東京都内の老人ホームで妻と暮らす。
家電や電子機器の操作、決められた時間に薬を飲むこと、鍵の取り扱いが難しくなったが、日常会話に支障はない。「年をとって認知症になることは当たり前だと思っています」と話し、「嫌なことを忘れるのも一つの特技」と捉える。散歩が楽しみで、迷ったときは周囲の人に道を聞くと丁寧に教えてくれるという。
昨年12月に群馬県から認知症本人大使「ぐんま希望大使」を委嘱された。「医師が訴える力は強いはず」と田中さんが推薦し、内田さんも「医師ならではのメッセージがあれば、認知症の人を支える地域づくりが進む」と引き受けた。認知症になっても希望をもって暮らすことを実践する。
今年3月、地元ラジオ局の特別番組に田中さんと親子で臨んだ。6月には、認知症患者と家族への支援などについて医療福祉関係者らが学ぶオンライン研修会に患者として参加。自身の状況を「あまりネガティブに思うことはない」と語り、記憶力の衰えを気にする人への助言や、支援を受ける側の考えを説明した。
厚生労働省の研究班によると、国内で認知症の高齢者数は22年時点で推計443万人にのぼり、65歳以上の人口がほぼピークを迎える40年には「高齢者の7人に1人」に相当する584万人となる見通しだ。認知症の人が自立して生活できる体制の整備が急務で、今年1月施行の認知症基本法では、自治体が本人や家族の意見を聞くことを努力義務に定めた。内田さんは「認知症に理解のある社会づくりに少しでも貢献したい。病んでいる人、弱っている人には優しい気持ちで接してほしい」と願っている。
-
【ジュネーブ=森井雄一】世界保健機関(WHO)は6日、開催中のパリ五輪で少なくとも40人の選手が新型コロナウイルスに感染したと発表した。世界各地で感染者が増加しているとして、対策強化を訴えた。
WHOによると、新型コロナ感染者は季節に関係なく急増が確認されている。五輪選手の感染もその一例と指摘した。
WHOの直近のデータでは、7月21日までの約1か月間で15万人超の感染が報告されている。排水中のウイルスを監視するデータを考慮すると、実際の感染者は報告数の2~20倍となる可能性があるという。
担当者は「感染者の急増で多くの国で入院や死亡数が増えており、食い止める必要がある」と訴え、各国に監視体制の強化を促すとともに、高齢者など重症化するリスクの高い人々はワクチンを接種して備えるよう求めた。
-
新型コロナウイルスの感染状況について、厚生労働省は2日、全国約5000か所の定点医療機関から7月22~28日の1週間に報告された感染者数が、1医療機関あたり14・58人だったと発表した。前週(13・62人)の1・07倍で、12週連続で増加した。
都道府県別では、佐賀が31・38人で最も多く、宮崎25・98人、熊本25・46人など九州が上位だった。39都道府県で前週より増えた。
-
厚生労働省の専門家部会は1日、米製薬大手イーライリリーのアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」(商品名ケサンラ)について、製造販売の承認を了承した。病気の原因とされる物質を除去するタイプの薬では、日本の製薬大手エーザイなどが開発したレカネマブに次いで2例目。11月にも公的保険が適用される見込み。
ドナネマブは、患者の脳内に蓄積する異常なたんぱく質「アミロイドβ(Aβ)」の塊を取り除き、病気の進行の抑制を図る。対象は、認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)の人を含むアルツハイマー病の早期の患者。点滴で月1回、最長1年半投与する。1年をめどに検査してAβの塊の消失が確認できれば投与をやめられる。
約1700人が参加した最終段階の臨床試験では、認知機能などの低下を22%抑える効果が確認された。病状がより早期のグループでは35%の抑制効果があった。副作用として脳の微小出血や腫れがみられた。
昨年8月、厚労省に承認申請が出され、米国では今年7月2日に承認されていた。米国での年間治療費は約3万2000ドル(約480万円)となっている。日本の薬価は厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会で議論される見通し。
レカネマブは昨年9月に国内で承認され、12月から保険診療で使われている。
-
日本の創薬力強化を目指す政府の戦略目標と工程表が判明した。欧米で承認された医薬品が日本で使えない「ドラッグロス」の解消に向け、2026年度までに必要性の高い薬の臨床試験に着手し、28年までに創薬を担うスタートアップ(新興企業)を10社以上誕生させることなどが柱だ。30日に産学官の関係者を集めた創薬関連サミットを首相官邸で開いて公表する。
厚生労働省によると、欧米で承認されているが、日本では開発が行われていない薬が23年3月時点で、がんや難病の分野などで86品目に上る。このうち、子ども用が4割近い32品目を占めている。
24年夏から5年間程度の工程表では、ドラッグロスが生じている86品目のうち必要性が高い薬について、臨床試験を26年度までに始める目標を掲げる。より深刻な子ども用の薬では、28年度までの5年間で開発計画を50件策定する。承認申請に関わる要件の緩和などを進めることで、製薬会社に開発を促し、国民に最新の薬を迅速に届けることを目指す。
新薬の開発では近年、米国を中心に新興企業が中核的な役割を担うようになっている。日本では、こうした企業の育成が進んでおらず、企業価値100億円以上の新興企業を28年までに10社以上、生み出す目標を打ち出す。国際共同治験に日本が参加できていないことも多いため、届け出件数を現状の1・5倍の年間150件に拡大することも盛り込む。
25年度には外資系の製薬会社やベンチャーキャピタル(起業投資会社)などが参加する官民協議会を発足させ、海外から日本への積極的な投資や研究拠点の開設につなげる。
-
脳死者から提供された臓器の移植手術を行う大学病院が、人員や病床の不足などから臓器の受け入れを断念している問題を受け、日本移植学会は「移植を待つ患者の権利を尊重し、確実に移植を実施できる医療体制の確立に全力を尽くす」とする提言を策定した。
提言は同学会理事会が、移植に携わる医師や医療機関の基本姿勢を議論してまとめ、26日に開かれた厚生労働省の専門家委員会で、小野稔・同学会理事長が明らかにした。
同学会は、1月1日に読売新聞がこの問題を報じた後、緊急調査を実施。東京大、京都大、東北大の3大学病院で昨年、集中治療室の不足や手術室の態勢が整わないなどの理由から計62件の断念例があったとする結果をまとめた。
さらに日本心臓移植学会は6月、東大と国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の2施設で昨年、心臓移植の断念例が計16件あり、移植の機会が見送られた16人のうち6人は、移植を受けられず、待機中だとする調査結果を発表した。
小野理事長はこの日の専門家委員会で「待機患者の移植を受けたいという意思を最大限尊重し、対応していくことが最も大切だ」とした上で、脳死下の臓器提供件数が2倍、3倍になった時に備えた全体構想をつくる必要性を訴えた。
-
新型コロナウイルスの感染状況について、厚生労働省は26日、全国約5000か所の定点医療機関から15~21日の1週間に報告された感染者数が、1医療機関あたり13・62人だったと発表した。前週(11・18人)の1・22倍で、11週連続で増加。前年同期(13・91人)とほぼ同水準となった。
都道府県別では、佐賀が最多の31・08人で、宮崎の29・72人、鹿児島の27・38人など九州が上位となった。
慈恵医大の浦島充佳教授(公衆衛生学)は「体調が優れないときは出勤や旅行を見送って休養してほしい」と話している。
-
人工妊娠中絶に使う国内初の飲み薬「メフィーゴパック」について、厚生労働省は25日、入院できる病床がある医療機関だけでなく、無床診療所にも使用を広げる見直し案をまとめた。国の研究で、従来の手術より安全だとする調査結果が示されたことを踏まえたもので、自民党厚労部会小委員会に報告した。厚労省はこの案を軸に見直しの検討を進め、8月にも専門家部会で議論する方針だ。
この飲み薬は、昨年5月から母体保護法指定医のもとで使われている。中絶の確認まで入院か院内の待機が必須条件になっている。
見直し案は、緊急連絡体制の確保などの条件を満たせば無床診療所で使用できるほか、服用した妊婦が、医療機関の近くに住む場合は帰宅を認めた。
研究は、昨年5~10月に2096施設で行われた中絶3万6007件を分析。子宮破裂や大量出血など重い合併症は、手術では0・2~0・6%の割合で起きたが、飲み薬は0件だった。
調査をまとめた中井章人・日本産婦人科医会副会長は「中絶の安全性を高めるには、この薬を普及させることが必須と考える。見直しの検討と合わせ、医師らが適切な情報提供を進めることが重要だ」と話している。
-
厚生労働省は24日、保有する新型コロナウイルス治療用の中和抗体薬について、計約160万人分を廃棄する案を専門家委員会に示し、了承された。一般流通は行われず、国が希望する医療機関に配分してきたが、通常の医療体制に移行したことに伴い、5月末で配分を終了したためだ。今後、別の専門家部会にも諮り、最終決定する。
廃棄されるのは、「ロナプリーブ」が約124万人分、「ゼビュディ」が約27万人分、「エバシェルド」が約11万人分。2021年7月以降に承認され、厚労省が必要量を確保してきた。しかし、新型コロナの変異に伴って治療効果が下がり、異なるタイプの抗ウイルス薬が優先的に使われるようになった。
抗ウイルス薬は不測の事態に備えて、厚労省が約435万人分の保管を続けるが、使用期限を迎えたものは順次廃棄する方針だ。